ジョリパットの外壁塗装3つの注意点と2つの塗り替え方法
外壁塗装にはさまざまな塗料や外壁材が存在します。使う外壁材によって外壁の質感や見た目は大きく変わりますし、使う塗料によってガラリと色合いも変わります。
そんな外壁材である「ジョリパット」の外壁塗装について、解説していきます。
ジョリパットはモルタルの仕上げ方法の商品名
ジョリパットとは、モルタル外壁の仕上げ方法の1つを指すと思われていて、そのような説明をしている会社がたくさんあります。
しかし実際は商品名ですので、同じくモルタル外壁の仕上げとして、有名なリシンやスタッコ吹き付けタイルのような通称ではありません。
以下の画像だと『仕上げ材』にあたる部分が、ジョリパットを使う部分になります。
今現在の外壁材の主流は、サイディングと呼ばれる工場で作った既製品のボードを貼り付けていくものです。
サイディングのシェアは80%に迫り、モルタルのシェアは10%を切っていると言われています。
そして、モルタル外壁の仕上げといえばかつては、リシンやスタッコ、吹き付けタイルと言った吹き付け仕上げでしたが、最近はジョリパットなど代表される塗材を使った左官職人さんによる塗り仕上げが主流となっています。
外壁がジョリパットだと言われたら、外壁材に使用しているのはモルタルです。
ジョリパットとはそもそも何なのか?
モルタルは、セメントと砂と水を混ぜて練ったものです。
そしてセメントは、石灰石、粘土、石膏を主原料とする粉末です。
セメントは、水と反応し硬化する性質があります。
セメントだけでは強度が弱いので、そこに細かい砂を混ぜたものがモルタルとなります。
ちなみに大きな砂利も混ぜたものがコンクリートとなります。
日本の昔の城や倉などの白壁は、漆喰しっくいと呼ばれ、その歴史は古く縄文時代後期までさかのぼりますが、モルタルはその漆喰の現代版で、主原料は石灰と変わりません。
漆喰はもともと、石灰と書かれていたものの当て字です。
英語でもmortarと記しますが、辞書で訳をひくと、やはりモルタル・漆喰とあります。
モルタルについて詳しくはこちらをご覧ください。
モルタルはセメントと砂と水を混ぜ合わせたものですので、モルタルが固まったとしても、モルタル自体には防水性はありません。
ですので、雨水からモルタルを守る為に、さらに外側に仕上げをする必要があります。
仕上げ材が塗装部分になり、この仕上げの最近の主力が、今回のジョリパットという商品になります。
仕上げ塗料のジョリパットとは?
ジョリパットとは、アクリル塗料の中に細かい砂などを混ぜた塗料で、1975年に名古屋に本社を置くアイカ工業株式会社が発売をして以来のベストセラー商品です。
吹き付けでの仕上げも可能ですが、その粘りがある特性を活かしコテで様々な模様をつけて仕上げるのが一般的です。
そのパターンは現在100種類以上あります。
ジョリパットカタログよりジョリパットの種類(一部) p.26-27 | アイカ工業株式会社
塗り壁といえばジョリパット、という程の人気があるので、塗り壁自体の事を指していると勘違いしている方も多いです。
ジョリパットと同様な塗り壁用の塗材としては、エスケー化研株式会社のベルアート、日本ペイント株式会社のインディアート等があります。
なぜジョリパットは人気なのか
モルタル外壁の仕上げと言えばジョリパット、と現在は言われるほどに人気があるのですが、それはなぜでしょうか?
もちろん、100種類にも及ぶ多彩な仕上げパターン、180以上もあるカラーバリエーションからくるオリジナルなデザインを実現できることが人気の理由の一つですが、大きな流れとしてサイディングの普及があります。
かつて、日本の一戸建てといえばモルタル外壁でした。
そしてコストが安く、施工も比較的容易で左官職人を必要としない、吹き付け仕上げ(リシンやスタッコ、吹き付けタイル)が主流となりました。
コスト安く、施工しやすいという長所を、まるっと代替したのがサイディング外壁です。
完全に主役の座を追われたモルタル外壁ですが、サイディングは工業製品で既製品です。
かつては、大量生産住宅の代名詞でもあったモルタル外壁は、今はその圧倒的な意匠性の高さをもつジョリパットやベルアートなどの塗り壁仕上げを味方にして、こだわった家を建てたいという注文住宅を主な市場として残ったのです。
サイディングについてはこちらをご覧ください。
ジョリパットの外壁塗装の費用
ジョリパットの外壁塗装の費用に関しても解説していきます。ただし、基本的に外壁塗装は下記のような要素で価格変わります。
・塗装する面積
・外壁の劣化具合
こうしたさまざまな要因で価格が変動するため、具体的な費用はそれら要素を調べたうえで算出しなければなりません。
そのため大幅にブレが生じますが、大体80万円から140万円ほどかかります。
ジョリパットのメリットデメリット
続いて、ジョリパットのメリットやデメリットについて解説していきます。
メリット①耐用年数が長い
ジョリパットのメリットの1つとして、耐用年数が長いことが挙げられます。耐用年数とは、壁材そのものの寿命のことで、適切なメンテナンスがあれば何年問題なく建造物を維持できるかという指標です。
ジョリパットは汚れやすく劣化しやすいものの、適切なメンテナンスを行うことで長く使用することができます。ジョリパットの耐用年数はおよそ15年から20年ほどです。
メリット②自由な意匠性
ジョリパットは塗り建材という、一般的な固形の建材とは違うもので、ある程度壁に模様を描くことができます。そのため、のっぺりとした壁ではなく、意匠性をもたせた独創的な壁としてデザインできるというのが大きなメリットと言えるでしょう。
ただ、当然複雑なデザインは難しく、デザインが複雑なほどそれだけ凹凸も増えることになり、汚れやほこり、カビが溜まって劣化しやすくなるといった欠点もあります。
メリット③小さなひび割れは起きにくい
外壁のトラブルであるひび割れ、いわゆるクラックですが、ジョリパットでは小さいひび割れが起きにくい特徴があります。
ひび割れは意匠を破壊してしまうため、折角の模様が台無しになってしまいますが、ジョリパットはひび割れにくいという性質から長持ちさせやすいというのがメリットと言えます。
ただ、経年劣化や雨風によって凹凸が削られて滑らかになっていくことだけは避けられないため、年月を経るごとに薄れていく可能性はあります。
デメリット①汚れが目立つ
凹凸が存在し、基本的につや消し塗装を行うため汚れが溜まりやすく、そのため汚れが他の壁材とくらべて目立ちやすいというのが大きなデメリットです。
艶あり塗料の壁と違って、拭いても汚れがなかなか消えず、かといって高圧洗浄で汚れを吹き飛ばそうにも出力が強いと折角の凹凸部分が削れてしまうため、洗い流すのも新調しなければならないという手間のかかりようは大きなデメリットと言えるでしょう。
デメリット②塗り替え時に注意点が多い
ジョリパットは塗り替える際にさまざまな注意点が存在しています。そのため、外壁塗装を行う業者がジョリパットの塗替えを経験しているかどうかで施工の質が大きく変わってきます。
例えば、あまりジョリパットでの塗替えを経験しておらず、知識も不足している業者が担当した場合、高圧洗浄で凹凸を削りながら洗浄してしまったり、塗料の指定がなかったからと艶あり塗料や弾性・伸縮性塗料を使ってしまったりと、注意するべき点を無視して作業してしまう可能性もあります。
デメリット③防水性が弱い
ジョリパットには凹凸があると解説しましたが、それだけでなく細かい穴が存在します。この穴から水分が浸透してしまうため、ジョリパットそのものの防水性は余り高くはありません。
そのため、ジョリパットを塗る下地となる下地材は耐水性の高いものを用意しなければならず、そういった意味でも適した下地材を使わなければならないという欠点につながります。多少の水分であれば蒸発するものの、スキマに染み込んだ水分は残っている可能性が高いため、注意しましょう。
ジョリパットの外壁塗装3つの注意点
ジョリパットについて解説する前に、まずはジョリパットの外壁塗装を行ううえでの注意点について解説します。ジョリパットで外壁塗装を利用するうえでいくつか注意しなければならない点があり、これを守れないとさまざまな問題が発生するため、注意が必要です。
注意点①なるべく築10年以内に
ジョリパットは比較的劣化しやすい壁材です。そのため、外壁塗装を行うのは遅くても築10年以内、できれば築5年から8年程度で行う方が良いでしょう。
ジョリパットは大体5年程度から外壁劣化の初期症状が発生し始めるため、痛む前に塗装や補修ができるのがベストでしょう。劣化しやすい理由としては、滑らかな壁材ではなくざらついた凹凸のある壁材であるため、汚れなどが付着しやすく、そのためカビが生えやすかったり塗料が剥がれやすいといった欠点を持っています。
注意点②弾性・伸縮性塗料はダメ
壁材と塗料には相性があり、相性の悪い塗料を使うと剥がれやすかったり膨らみが生じて見栄えが悪くなります。ジョリパットにも相性が良くない塗料が存在し、それが弾性塗料と伸縮性塗料です。
この2種類の塗料はひび割れなどを埋めることができる塗料で、本来は壁にできたひび割れなどの凹凸を埋めて滑らかに見せることができる塗料ですが、前述したようにジョリパット自体が凹凸のある壁材であるため、その凹凸部分に伸びて塗料が塗られてしまい、外壁と塗料の隙間に空気が存在する状態になります。
この状態は膨らみの原因になってしまうため、ジョリパットに弾性・伸縮性の塗料を使うのは避けた方が良いでしょう。
注意点③高圧洗浄は慎重に
壁を洗う際に水をかけて洗うことが多いと思われますが、通常のホースによる放水は問題ないものの、高圧洗浄機を使った洗浄には気をつけましょう。高圧洗浄機で強く洗い落としてしまうと、凹凸が削れてしまいます。しかし、同時にこの凹凸によって汚れや雨水が溜まりやすいので、これを高圧洗浄機で落とせないと、塗った塗料が剥げたり膨らんでしまう原因になります。
ジョリパットの洗浄には高圧洗浄機ではなく、薬剤で汚れを洗い流すバイオ洗浄が適しています。
ジョリパットの2つの塗り替え方法
ジョリパットには主に2つの塗替え方法が存在します。1つはジョリパット特有の表面を活かした塗装、もう1つはジョリパット特有の表面を塗りつぶす形の塗装です。
ジョリパットを壁材に使用しているのであれば、ジョリパット特有の風合いを残したい所ですが、こちらの場合は使用できる塗料が限られてしまいます。また、ジョリパットの欠点である汚れやすさもそのままです。
・コケが生えやすくなるのが気になる
・メンテナンスの手間を減らしたい
ということであれば艶あり塗装を使用することをおすすめします。
ジョリパットの風合いを残した艶なし塗装
ジョリパットのざらざらとした凹凸ある風合いを残したい場合に使用する艶無し塗料ですが、ジョリパット専用の塗料というものが存在します。
今回ご紹介するのはアイカ工業製の2種と、菊水製の1種の計3種です。それぞれの特徴について解説していきましょう。
アイカ工業製専用塗料ジョリパットフレッシュ
アイカ工業製のジョリパット専用塗料であるジョリパットフレッシュは、ローラーで塗ることができるジョリパット専用の艶無し塗料です。
色が豊富なのが特徴で、80から150色近くの色の中から、ジョリパットの質感を残したまま塗り替えることができます。防カビ性に優れており、カビやすいジョリパットの欠点を補ってくれるのもポイントです。
アイカ工業製専用遮熱塗料ジョリパットフレッシュクール
同じくアイカ工業製の専用塗料であるジョリパットフレッシュクールですが、これは単純にジョリパットフレッシュの遮熱塗料版、つまり熱を通さず逃さないタイプの塗料です。
建造物というのは日光などを受けて温まり、結果として室内の温度も温かくなります。
外壁や屋根の温度が室内に伝わらなければ夏場に室温が上がることも、冬場に室温が逃げることも無くなるため、冷暖房の負担を減らすことができます。
基本的な仕様はジョリパットフレッシュと同じです。
菊水工業製艶なし専用塗料 グラナダフレッシュ
菊水工業製のジョリパット専用塗料であるグラナダフレッシュは、複数種あるジョリパット専用塗料の中でも人気が高く、特におすすめされることが多い塗料です。
アクリルシリコン樹脂塗料で、光安定剤であるHALSと合わせた高い対紫外線耐久性や熱による劣化に強いといった特性があります。
また、透湿性が高いため湿気が溜まりづらく、凹凸に溜まった湿気などによる剥がれや膨らみを防止します。
風合いよりも汚れにくくしたいなら艶あり塗装
専用塗料以外でも、弾性・伸縮性塗料以外の一般的な塗料を使うことも可能です。ジョリパット特有の凹凸のある風合いは薄れてしまいますが、完全に消えるわけではないため、こちらはこちらで独特の見た目になります。
ジョリパットの特徴兼欠点でもあった凹凸が減るため、必然的に汚れにくくなり多少長持ちするようになるといったメリットも存在します。
ジョリパットをいつまでも綺麗に保つために
ジョリパットの耐用年数を活かし、かつこだわった意匠を維持するためには定期的なメンテナンスが欠かせません。最後にジョリパットを長く綺麗に保つために意識しなければならないことについて解説していきましょう。
ポイント①なるべく早く外壁塗装を行う
ジョリパットは耐用年数こそありますが汚れや水を溜め込みやすく、そのためカビも生えやすいなど、劣化しやすい壁材です。そのため、外壁塗装などはできるだけ早く行う、定期的に行う必要があると言えます。
劣化の初期症状が現れるのが大体5年前後、そこから外壁に大きな影響が及ばない範囲が8年、最悪でも10年までには外壁塗装を行わなければ、劣化が進み高額な補修費用が発生する可能性があり、寿命も短くなってしまいます。
外壁塗装アドバイザー
金井のコメント
ポイント②ジョリパット経験のある塗装店に頼む
ジョリパットは外壁塗装を行う際に注意点が多いため、なるべく経験を積んだ塗装専門店に依頼をするようにしましょう。ホームセンターなども塗装を受け付けていますが、大抵下請け業者に仕事を丸投げするだけなので、ジョリパットの塗装経験などを把握しておらず、伝達ミスなども発生する可能性があるため危険です。
事前に評判や経験実績などを確認したうえで業者を選び、相談の時点で経験の有無や、どのように作業を行うのかなどを確認し、契約を結ぶようにしましょう。
まとめ
以上、ジョリパットの外壁塗装における注意点や、塗り替え方法について解説しました。
デリケートで取り扱いの難しいジョリパットですが、その高いデザイン性は住宅に個性を出すうえで欠かせません。耐用年数も高く、長い間景観を彩ってくれるジョリパットを長く綺麗に使うためにも、正しい知識と方法を持った塗装点に依頼をするようにしましょう。
一般的なモルタルと比較して、ジョリパットは塗装のスパンが短いので塗装時期の適切なタイミングは見極めるようにしましょう。
まずは塗装店に現地調査を依頼してもいいと思います。
現地調査は塗装を勧めることが目的ではなく、外壁の劣化状況の診断が目的です。
当社では、まだ塗装が早ければ「いつごろ塗装すべきか?」のアドバイスもできますのでお気軽にご相談下さい。