クリア塗装とは?外壁の色や風合いを保ちたい方におすすめの塗装方法
外壁塗装をしなくてはならないが、既存の壁の色合いを残したい……と考えている方もいることでしょう。基本的に外壁塗装で使われる塗料は既存の壁を塗りつぶしてしまうため、その願いは叶いません。
しかし、中には透明な塗料というのも存在していて、クリア塗装が行なえます。
今回はクリア塗装とは何か、クリア塗装を行うことができるパターンやできないパターンなどを解説していきます。
クリア塗装とは
そもそもクリア塗装とは何か、という点について解説しましょう。
クリア塗装とは、透明塗料を使った塗装のことを指します。
透明な塗料なので、当然外壁などの既存の色合いや風合いをそのまま維持した状態で、塗料の防護性能を得ることが可能です。
ただし、クリア塗装が行えない場合もあり、必ずしも選べるとは限りません。
クリア塗装ができない人
クリア塗装が選べない人、というのは基本的にクリア塗装が行えない程外壁が劣化している建築物に住んでいる人です。
例えば、大きなキズがあった場合、通常はコーキング材を入れて塞いだ上で塗装を行います。
当然、コーキング材には色がついているため、その上からクリア塗装を行えばコーキング材を塗った跡もそのまま見えてしまいます。
見栄えが悪くなるため、傷がある場合は基本コーキング材で塞がずにクリア塗装を行いますが、塗料には大きな傷を埋める程の効果は無いため、傷のある部分は塗装の効果が弱くなります。
また、特定の塗料を使用したサイディングボードにはクリア塗装を行えません。
特定の塗料というのは「無機系・フッ素系・光触媒」のいずれかで、該当する塗料を使用している外壁の上からクリア塗装を行ってもすぐに効果が失われてしまいます。
理由としては、まず塗料というのは基本外部の刺激を防ぐためのもので、汚れや雨水を弾いたりするものが多いためです。
その中でも、上記の塗料は耐久性が高いためクリア塗料が定着せず、剥がれやすい状態になるのですぐに剥がれてしまうのです。
クリア塗装のメリット
クリア塗装を行うメリットについて解説をしていきましょう。
クリア塗装のメリットは主に3つあります。
・外壁材のデザイン性が失われない
・外壁にツヤができて見栄えが良くなる
・家の寿命が短くなるのを防げる
これら3つについて、それぞれ解説します。
外壁材のデザイン性が失われない
そもそもクリア塗装とは、透明の塗料(顔料という色の元が入っていない塗料)で塗る施工方法のことです。
通常は、外壁のデく色をつけて塗り替えます。
クリア塗装にすると、新築時に選んだデザインをそのまま維持できて、なおかつ艶が出る仕上げになります。
今の家の外壁が気に入っているのでそのまま維持したい、という方はおすすめです。
以下は日本ペイントが出しているクリア塗料ですが、かなりツヤツヤした仕上がりになります。
外壁にツヤができて見栄えが良くなる
クリア塗装は透明ですが、全く見えないというわけではなく、塗ることによってツヤが出るようになります。滑らかな見た目になるため、見栄えが良くなります。
ただし、外壁材の種類によってはツヤのある状態よりもツヤのない状態の方が合っている場合もあるため、外壁材の種類によって変わるでしょう。
塗装することでカビやコケの防止もできるため、見栄えの維持も期待することができます。
ただし、人によってはツヤツヤした見た目は苦手、という人もいることでしょう。そういった人にとってはデメリットにもなり得ます。
家の寿命が短くなるのを防げる
塗料であるため、当然塗料としての外壁の防護性能を有しています。
そのため、壁の耐久性や耐用年数を維持でき、外壁が長持ちするということは柱なども長持ちするといったことにつながるため、家自体の寿命が短くなるのを防げます。
ただ、下記でご説明する「クリア塗料のデメリット」で詳細に解説しますが、クリア塗料自体は他の一般的な塗料と比較しても性能が低いため、基本的に他の塗料よりも耐用年数が短いといった点には注意しましょう。
外壁塗装をしないとどうなるのか?については下記記事で解説しています。
クリア塗装のデメリット
続いてはクリア塗料のデメリットについて解説していきます。
クリア塗料のデメリットも主に3種類あり、解説するのは以下の通りです。
・他の塗料に比べて耐久性が低い
・お家の劣化具合によって塗装できない
・適していない外壁材がある
それぞれ解説していきましょう。
他の塗料に比べて耐久性が低い
一般的な塗料は基本色を後付けする形で着色しているため、用意しているカラーリング数こそ塗料によって異なりますが、色がついているからといって性能に差はありません。
しいて言えば、黒色は日光を吸収するため熱しやすいというような、色そのものの特徴はありますが、その程度です。
しかし、クリア塗料は塗料としての性能よりも「透明であること」を目的としているため、その分性能が犠牲になっているようで、通常の色付き塗料と比較すると耐久性に劣ります。
もちろん効果がない・1年程度ですぐ落ちるというほど耐久性が低いわけではないものの、他の塗料と比べるとメンテナンス・塗り直しの回数は多くなります。
通常の塗料がおよそ7〜10年程度の耐用年数があるとするなら、クリア塗料は7年程度とものによっては3年程の差が生じます。
ただし、これはあくまでも通常のクリア塗料の話であり、UVカットクリア塗料であれば耐用年数は10年程度に伸びるため、通常の塗料とさほど変わらなくなります。
お家の劣化具合によって塗装できない
基本的に、新築当時のように綺麗な状態のお家であれば、塗装ができます。
傷が少ないと良いとされるのには理由があります。
クリア塗装は透明塗料ですので、大きな傷があると目立ってしまいます。
では直してから塗装すればいい、と考える方がいらっしゃるかと思うのですが、例えば外壁にひび割れ(クラック)が入っている外壁を直すには、コーキング材というもので埋めなければなりません。
割れ目を埋めなければそこから雨水が入ってきますので、防水性のコーキング材をいれます。
しかし、コーキング材には色がついていますので、デザインが強い外壁では見た目が浮くため、使用できません。
そうすると、大きな傷があってもそのまま上からクリヤー塗装する、ということになってしまいます。
傷の上から塗装しても、傷の部分の塗装はかなり弱いです。
穴が空いている上に塗装することと一緒ですので、ほとんど塗装の意味を成しません。
そういった理由から、ある程度綺麗な外壁の場合のみクリヤー塗装ができるのです。
適していない外壁材がある
クリア塗料は、基本的に光触媒や無機、フッ素のコーティングされているサイディングボードと相性が悪いです。
光触媒や無機系、フッ素系のコーティングがされている外壁の上からクリヤー塗装をすると、早い段階で塗装が剥がれます。
なぜなら耐久性が強すぎてクリヤー塗料がくっつかないからです。
上から塗れる外壁材はクリヤー塗料にもよりますが、塗装する前に、自分の外壁にはどのコーティングがされているか確認しておきましょう。
クリア塗装に適した外壁材
塗料と壁材には相性というものがあります。一部塗料を使ったサイディングボードと相性が悪いと解説したように、逆に言えば相性の良い外壁材も存在するということです。
相性が良い外壁材に使うことでより効果的にクリア塗料を活かすことができたり、相乗効果で耐久性が増したりします。
デザイン性の高いサイディング
クリア塗料の最大の特徴にしてメリットは透明であることです。そのため、元々のデザイン性が高く、通常の塗料で塗りつぶすのが勿体ないという外壁材に対して使うのが効果的と言えます。
素材の味を活かして、かつ無塗装よりも圧倒的に耐久性が増すため、元のデザイン性を活かしたいといった場合におすすめです。
ただし、基本的に完全無塗装の建築物というのはほとんど無いため、元々塗料によってデザインされている外壁の場合は同じ塗料の同じ色で再塗装した方が効果的です。
コンクリート
材質面で相性が良い外壁材というと、コンクリートが挙げられます。
打ちっぱなしコンクリートの壁材は、汚れやすく雨水が侵入しやすい壁材で、耐久性や防水性を確保するために揮発剤とクリア塗料を併用するという塗装方法が存在します。
また、クリア塗料に着色して使用するカラークリア工法なども存在します。
揮発剤と併用するため通常の塗装よりも費用が高くなってしまいますが、防水性に防サビ性が高まることで耐久性が向上し、耐用年数を大幅に引き伸ばすことができます。
クリア塗料のグレードや種類
基本的に、意匠性の高いサイディングボードに使用される場合が多いため、サイディングボード用のクリヤー塗料は様々なものがあります。
以下はクリア塗装によく使用されている塗料一覧です。この表でのグレードについては、樹脂で比較しております。
グレード | 耐用年数 | 商品名 | メーカー名 |
---|---|---|---|
フッ素樹脂 | 不明 | UVプロテクトクリヤー(フッ素系) | 日本ペイント |
アクリルシリコン樹脂 | 12~15年 | クリーンSDトップ | エスケー化研 |
アクリルシリコン樹脂 | 不明 | UVプロテクトクリヤー(セラミック系) | 日本ペイント |
※クリーンSDトップの耐用年数はあくまでも期待耐用年数になります。
これよりも早く塗り替える時期がくる可能性がありますので、ご注意ください。
クリア塗料を選ぶ時は、性能と塗装費用を鑑みて決定してください。
何よりも塗料の性能を重視する方は、フッ素樹脂以上を使用しているクリア塗料を選ばれるほうが良いです。
今回はサイディングボード用の塗料をご紹介いたしましたが、モルタル壁など専用のクリア塗料はほとんどアクリル樹脂といって外壁塗装に向かない塗料がありますので、ご紹介しませんでした。
モルタル壁やALC、コンクリートの塗装は、通常の塗りつぶし塗装をおすすめいたします。
クリア塗装を検討しているなら早めの現地調査が必要
クリア塗装は通常の塗装と違い、外壁材の劣化度合いやタイミングが重要な要素になります。
そのため、クリア塗装を検討する段階では、まず塗装予定の外壁がクリア塗装に対応しているかの把握が必要です。
それ以外にも、クリア塗装に関する知識や経験がある業者を選ぶ必要があります。
例えば、外壁には外壁材・塗料の他にコーキング材というものがあります。
これは外壁材と外壁材をつなぐ部分に使われる素材で、外壁材同士がぶつかったり歪んだりしないようにする効果や、隙間から雨水が入らないように防止する効果があるため、大抵の外壁材にはコーキングも行われていると言っても良いでしょう。
わかりやすいのがレンガ状の壁などのレンガ部分同士のつなぎ目にあるゴム質の部分、あれがコーキングされた部分です。
クリア塗装はコーキング処理されている部分には行えません。コーキング部分にクリア塗料を塗ってしまうと、剥離の原因になったり、塗膜が汚染されてしまいます。
そのため、外壁塗装業者がクリア塗装についての知識や実績をもっているか見極める必要があります。
確認方法としては、「コーキング部分に塗装するのか」、「この外壁材にクリア塗料は使えるか」といった質問をすることで、クリア塗装を行えるかどうかを判断できます。
クリア塗装に関してよくある質問
①新築から数年でクリア塗装したら、しばらく外壁塗装しないで長持ちしますか?
Q
新築から数年でクリア塗装したら、しばらく外壁塗装しないで長持ちしますか?
A
それは間違いなく長持ちします。
回答者
嘉瀬 裕之
塗装は塗膜によるバリアですので、クリア塗装は透明な塗料ですから同じ効果が得られます。
新築間もなくの方に塗装の相談を受けたのがはじめてで驚いていますが、クリア塗装を希望する方は現在の外壁があまり傷んでいない事が絶対条件ですので、その条件はもちろん完全にクリアします。
ちなみに…
ただサイディング外壁の場合、クリア塗装でバリアを張って長持ちさせたとしても、コーキングの交換は10年前後でやってきます。
その際にも足場の設置が必要になってきますので、本来であれば一度でできたコーキング処理と塗装のタイミングがずれていく事が考えられます。
ですので、さすがに今実施するのは避けて、10年を前にしたまだ外壁材が傷んでいないタイミングで1回めのクリア塗装とコーキング処理を行うのが、ご希望を叶えつつ経済的な選択かとお思います。
②築15年ではクリア塗装は難しいのでしょうか?
Q
築15年ではクリア塗装は難しいのでしょうか?
A
前回の塗装から10年以上経過していると、クリア塗装はできない可能性が高いです。
回答者
嘉瀬 裕之
クリア塗料は外壁の条件によって、提案できる場合とできない場合があります。その条件が今の外壁が傷んでいない事です。
ちなみに…
理由は2つあります。
1つ目が外壁の傷を隠せないからです。
透明なので今の外壁に傷などがあると補修してもわかりやすく、美観を保つ効果がありません。
2つ目が白ボケしてしまうからです。
塗料は大体10~15年でチョーキングと言われる表面が粉になってしまう現象が起こります。
粉になっている表面に透明な塗料を塗ると、粉が伸びて色や柄が白ボケしてしまいます。
せっかくこだわった外壁の柄が白ボケしてしまうくらいなら、できるだけ今と似せられる色や質感の塗料を塗装店さんと相談して選んだ方がいいのではないかと思います。
クリア塗装の重要事項まとめ
塗装は塗膜によるバリアですので、クリア塗装は透明な塗料ですから同じ効果が得られます。
新築間もなくの方に塗装の相談を受けたのがはじめてで驚いていますが、クリア塗装を希望する方は現在の外壁があまり傷んでいない事が絶対条件ですので、その条件はもちろん完全にクリアします。
ただサイディング外壁の場合、クリア塗装でバリアを張って長持ちさせたとしても、コーキングの交換は10年前後でやってきます。
その際にも足場の設置が必要になってきますので、本来であれば一度でできたコーキング処理と塗装のタイミングがずれていく事が考えられます。
ですので、さすがに今実施するのは避けて、10年を前にしたまだ外壁材が傷んでいないタイミングで1回めのクリア塗装とコーキング処理を行うのが、ご希望を叶えつつ経済的な選択かとお思います。
クリア塗料は外壁の条件によって、提案できる場合とできない場合があります。その条件が今の外壁が傷んでいない事です。
理由は2つあります。
1つ目が外壁の傷を隠せないからです。
透明なので今の外壁に傷などがあると補修してもわかりやすく、美観を保つ効果がありません。
2つ目が白ボケしてしまうからです。
塗料は大体10~15年でチョーキングと言われる表面が粉になってしまう現象が起こります。
粉になっている表面に透明な塗料を塗ると、粉が伸びて色や柄が白ボケしてしまいます。
せっかくこだわった外壁の柄が白ボケしてしまうくらいなら、できるだけ今と似せられる色や質感の塗料を塗装店さんと相談して選んだ方がいいのではないかと思います。
最後にクリア塗装に関して、要点をまとめていきます。
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Q.クリア塗装とは?
A.クリア塗装とは透明な塗料を使った塗装です。外壁材そのもののデザインを活かしたまま塗料による防水性や耐久性の向上を得られます。
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Q.クリア塗装に向いている外壁は?
A.クリア塗装に向いているのは元々のデザイン性が高い外壁や、コンクリート材を使った外壁です。逆に向いていないのは特定の塗料を使った外壁です。
クリア塗装は通常の塗料とは異なり、クリア塗装ならではの特徴や注意点が存在します。
そのため、施工を検討する側にもある程度知識が必要であると言えます。
また、特殊な塗料に関して共通することですが、塗装業者がその塗料で塗装した経験があるか、専門的な知識を有しているかというのも重要なポイントです。
ちゃんとした業者であればクリア塗装の知識と経験は問題なく有していますが、手抜き工事をするような悪徳業者の場合はちゃんとした知識を有していない可能性があるため、現地調査や業者探しを怠らないようにしましょう。