外壁塗装は吹き付けとローラー塗装はどちらが優れているのか?
あなたは、外壁の塗り替えと聞いたらどんな方法で塗装するのだとイメージしますか?
刷毛(ハケ)やローラーで地道に塗装するイメージを持つ方がいれば、機械を使ってスプレー塗装するイメージを持つ方もいるでしょう。
『吹き付け』とは、その名のとおり機械を使ってスプレー状に塗料を吹き付けて塗装する工法を指します。
ここで気になるのがこんな疑問です。
- 吹き付けと手塗り、どちらが優れているのか?
- ぜひ吹き付けでお願いしたい!という希望は聞いてもらえるのか?
- 「吹き付けをします」といわれたけど、手塗りのほうが安くなるのでは?
今回は外壁塗装の『吹き付け』について、こんな疑問をまとめて解消していきます!
吹き付けと手塗り、どちらが優れているか?
「吹き付けと手塗り、どちらが優れているのか?」という疑問の答えは、一概には正解がありません。
ここでは、いくつかの特性に注目してどちらが優れているのかを分析していきましょう。
手際の良さでは圧倒的に吹き付けが有利
外壁塗装の手際の良さという意味では、吹き付けのほうが圧倒的に優れています。
吹き付けを使って外壁の広い面を塗装する場合、スプレーガンを左右に動かすだけで肩幅くらい面積が一気に塗装できます。
この動作を、ホウキで「サッ、サッ」となでるような感覚で繰り返せば、広い面でもあっという間に塗り終わってしまいます。
ローラーやハケで手塗り塗装する場合は、塗料のペール缶の中でしっかり塗料を含ませて、液だれしないように余分な塗料を切って、やっと塗装できます。
この動作があるのと省略できるのとでは、作業の手際に格段の差が生じるのです。
ただし、吹き付けは「広い面を一気に塗装できる」というものではありません。
広範囲にスプレーしてしまうと、まず間違いなく色ムラが発生します。
吹き付けといえども、小さく塗り重ねていくという基本は手塗りと何ら変わらないのです。
仕上げの重厚感でも吹き付けが有利
吹き付け塗装を使えば、外壁に重厚感を持たせた仕上げが可能になります。
そもそも、サイディング外壁が主流になるまでは、塗料に細かな骨材を混合した『リシン』や、骨材の量を増やして立体感を演出する『スタッコ』という仕上げ方法が一般的でした。
少し古い住宅では、小さな小石のようなものが混ざった、触れるとザラザラして痛い仕上げをした外壁をよく見かけるでしょう。
これが『リシン』や『スタッコ』です。
また、不揃いな水滴が潰れたような模様の外壁に出会うこともありますが、これも吹き付けによる施工です。
粘度が高いフィラーという下塗り材を小さな球状に吹き付けて、シンナーで濡らしたプラスチックローラーで玉を潰すことで、幾何学的な模様ができます。
これを『タイルカット』といいます。
これらは、いずれも吹き付けによってのみ可能な重厚感のある仕上げなので、この点に注目すれば吹き付けのほうが優れているともいえます。
周囲への配慮では手塗りが有利
吹き付けの最大の弱点は「周囲への配慮が大変」という点です。
吹き付けでは、どんなに注意しても塗料が周囲に飛散します。
塗装現場の足場には飛散防止ネットがかけられていますが、塗料の粒子があまりにも微細であるため、近隣の住宅などに飛散するおそれがあります。
少しでも風が吹いていれば確実に塗料が飛散するので、周辺の住宅に声かけをして洗濯物を取り込んでもらったり、駐車している車にはカバーをかけたりと、吹き付けは「吹き付けを始めるまで」がとても大変です。
その点、ローラーやハケを使った手塗りなら、周囲への配慮はほとんど不要ですから、この点については手塗りのほうが優れているといえるでしょう。
仕上がりの美しさにも差があるのか?
住宅ほどの大きなものではなくても、何らかの塗装をしたことがある方なら理解できるはずですが、スプレー塗装はハケや筆などで塗装するよりもずっと美しく仕上がります。
非常にわかりやすいのがプラモデルです。
まったく同じ塗料を使って塗装した場合でも、筆で塗った場合はペタペタとした印象があって不格好ですが、エアブラシを使うと均一でムラのない美しい塗装に仕上がります。
こんなイメージがあるため、外壁塗装を希望する方のなかには「仕上がりが美しいので吹き付けでお願いしたい」という方がいます。
結論としては、吹き付けも手塗りも仕上がりの美しさに差はありません。
おそらく、素人目には吹き付けで塗装しても手塗りをしても見分けがつかないはずです。
なぜ仕上がりの美しさに差がないのかというと、手塗りの道具の品質が向上しているからです。
特にローラーの品質向上は著しく、10年前、20年前とは比較にならないほどで、仕上がりの美しさは吹き付けに引けを取りません。
外壁塗装の『吹き付け』とは?
※ここからは少し専門的な話になりますので、読み飛ばしてもらっても問題ありません。
外壁塗装における『吹き付け』とは、機械を使って塗料をスプレー状に吹き付ける塗装方法です。
一般的にスプレーといえばスプレー缶などをイメージするかもしれませんが、スプレー缶1本あたりの塗装面積は2回塗りで1㎡程度です。
これがどのくらいの面積なのかというと、わずか畳1枚分にも満たない面積になります。
もし建坪40坪の住宅の外壁をスプレー缶で塗装しようとすれば、なんと160本ものスプレー缶が必要になる計算ですから、効率が悪いですよね。
そこで、外壁塗装では専用の機械や道具を使って、もっと効率よくスプレー塗装をおこないます。
吹き付けは古い?手塗りが増えた理由
今から20~30年くらい前までは「外壁塗装の職人は吹き付けができて一人前」だといわれていました。
それくらい、吹き付けによる塗装が盛んだったのです。
ところが、住宅の外壁仕上げに『サイディングボード』という選択肢が定着してからは、すっかりと吹き付けの出番が少なくなってしまいました。
サイディングボードによる外壁仕上げは、新築時では工場で塗装された製品を張り付けるだけで済みます。
塗り替えの際にも、製品が改良されて使いやすくなったローラーのほうが便利だといわれるようになり、吹き付けで塗装する職人が激減しました。
今では、若い世代の塗装職人の中には「吹き付けを経験したことがない」という人までいる状態ですが、それくらい需要がなくなっているというのが事実でもあります。
吹き付けで使用する道具
吹き付けで使用する道具は、圧力をかけるための『コンプレッサー』という機械と、塗料を自由自在に吹き出すための『スプレーガン』の2つです。
2種類のコンプレッサーの違い
圧力をかけるためのコンプレッサーには、2種類のものがあります。
- エアーコンプレッサー
- エアーレスコンプレッサー
エアーコンプレッサーとは「空気の圧力によって塗料を吹き出す」方式の機械です。
コンプレッサー自体は高圧の空気を生み出すために作動しており、本体からのびたホースの中には高圧の空気が詰まっています。
塗料が本体やホースに送り込まれることはありません。
もう一方のエアーレスコンプレッサーは、その名のとおり空気を使いません。
コンプレッサーの本体に塗料を吸い上げて、本体内で塗料そのものに圧力をかけた状態でホースに送り込みます。
コンプレッサー本体の機能が「空気に圧力をかける」のか、それとも「吸い上げた塗料に圧力をかけるのか」という差がありますが、基本的にはエアーコンプレッサーのほうが高圧になります。
そのため、粘度が低い塗料で塗装するならエアーレスでも可能ですが、粘度が高い骨材入りの塗料などを吹き付ける場合はエアーコンプレッサーでないと対応できません。
「高圧である」という面ではエアーコンプレッサーに分がありますが、扱いやすいのはエアーレスコンプレッサーです。
エアーコンプレッサーを使用する場合は塗料を持ち運ぶ必要がありますが、エアーレスコンプレッサーなら機械が塗料を送り出してくれるので身軽になります。
高い場所を塗装する場合には、塗料の補充のために足場を降りる手間が省けるので、エアーレスコンプレッサーのほうが断然に便利です。
スプレーガンにも種類がある
実際に吹き付けをおこなうスプレーガンにも種類があります。
エアーコンプレッサーを使用する場合には、塗料の供給方法によって2つの種類のものを使い分けます。
- ガンの上部に塗料を入れるカップを装着している『重力式』
- ガンの下部にカップを装着して内圧の差で塗料を吸い上げる『吸上式』
通常の塗料であれば、吸上式のほうが塗料をこぼしてしまう心配がないので便利ですが、粘度が高い塗料を塗装する場合は吸い上げられないので重力式を使います。
エアーレスコンプレッサーを使用する場合は、ガンに塗料を入れるカップが不要なので、シンプルなトリガーのみのガンを使います。
「ぜひ吹き付けで」という要望は通じるのか?
外壁塗装の打ち合わせの段階で「ぜひ吹き付けで塗装してもらいたい!」と要望した場合、外壁塗装業者は要望に応えてくれるのでしょうか?
どちらを選ぶかは基本的に業者・職人にお任せ
吹き付けをするか、それとも手塗りで済ませるのかの選択は、基本的には塗装業者の職人にお任せするしかありません。
「どうしても外壁を吹き付けで塗装して欲しい」と言われたところで、吹き付けが適さないと判断すれば断られるはずです。
ただし「どうしても吹き付けをしないで欲しい」という要望にはほぼ間違いなく応えてもらえるでしょう。
吹き付けは周囲への配慮が必要な工法です。
もし近隣の住宅から「絶対にやめて欲しい」と苦情があれば、無理やりに断行するのはトラブルの原因となるため施工方法を見直すくらいですから、依頼主さまからの要望であれば吹き付けをすることはありません。
塗装する建材や仕上げ方法、現場の状況によって選ぶ
吹き付けをするか、手塗りにするかの判断は、塗装する建材の種類、仕上げ方法、現場や周囲の状況によって左右されます。
たとえば、アルミ製の雨戸やドアなどを塗装する場合は、ローラーやハケを使うと塗装時の筋が残りやすいため、吹き付けで塗装します。
また、リシンやスタッコのように、吹き付けを使わないと実現できない仕上げの場合は吹き付けを使います。
ただし、住宅が密集しているエリアや、スプレーガンを外壁から離して塗装できないような狭い場所では吹き付けができないこともあります。
外壁塗装の職人は、これまでの経験をもとに「吹き付けが可能」や「吹き付けは適さない」と判断するので、吹き付けの可否は完全に職人任せになると考えておくべきでしょう。
吹き付けは費用が高くなる?
吹き付けではコンプレッサーという機械を使って塗装するため「もしかすると費用が高くなるのでは?」と心配する方もいるでしょう。
吹き付けをすると塗装費用が高くなるのでしょうか?
人件費の面では吹き付けのほうが安い
実は、吹き付けをするとわずかに費用が安くなることがあります。
なぜなら、塗装が早く終わるからです。
外壁塗装の費用は塗装面積をベースに決まりますが、同時に人件費も見積もり計算の中に入っています。
吹き付けの場合、手塗りよりも早く塗装が完了します。
すると、1日あたりの1人分の人件費を指す『人工(にんく)』が減ることになり、1~2人工分、金額にすると2~5万円くらい安くなることがあります。
しかし材料費が少し高くなる
吹き付けの弱点のひとつが「塗料が余分に必要になる」という点です。
吹き付けで塗装すると、塗装面に塗料が付着するまでの空気中にわずかに飛散するため、手塗りと比較すると20%くらい余分に塗料を使用するといわれています。
実際のイメージでは、手塗りなら一斗缶3つで塗装できる面が、吹き付けだと3缶半くらい必要になります。
外壁塗装で使用する塗料の量は、ガソリン給油のように実数で計算するのではなく、塗装面積に対して概算するため、見積もりの時点で塗料を多く使うことを見越して計算しています。
人件費の面ではわずかに安くなり、材料費の面でわずかに高くなることで、ほぼ差し引きゼロです。
つまり、結論は「吹き付けも手塗りも費用は変わらない」ということになります。
吹き付けは経験が必須!実績が豊かな外壁塗装業者を選ぼう!
冒頭でもお伝えしたとおり、現在の外壁塗装業界では吹き付けの経験が圧倒的に不足している職人が増えています。
もし、吹き付けを使う仕上げを希望している、どうしても吹き付けで塗装してもらいたいといった要望をお持ちであれば、吹き付け塗装の経験が豊富な塗装業者を選ぶ必要があります。
外壁塗装パートナーズでは、経験・実績がともに豊富な優良業者を厳選して、簡単3ステップで最大3社の外壁塗装業者をご紹介しております。
お問い合わせでは専門の外壁塗装アドバイザーがご要望をうかがいますので、ぜひ「吹き付けの実績が豊富な業者を紹介して欲しい」とお伝えください。
きっと、あなたのご希望にかなう外壁塗装業者とめぐり会えるはずです。