ナノコンポジット(水谷ペイント)の特徴は?メリットデメリットと注意点を解説
塗料メーカーの水谷ペイントの特色は、業界でも屈指の自社重合技術です。
塗料性能の大部分を占める「樹脂」の合成から塗料化までを一貫生産することで、その用途に特化させた高品質な塗料を提供しています。
創業98年を迎えた水谷ペイントは、塗料業界で初めて合成樹脂塗料の開発に成功し、今日まで塗料のパイオニアとして地位を築いてきました。
そんな水谷ペイントは、塗料業界では初めてとなる最先端のナノテクノロジーを駆使した、画期的な塗料であるナノコンポジットWの開発に成功し、2004年に販売しました。
2007年には、ナノコンポジットWが日本三大技術賞のひとつと言われる「井上春成賞」を、塗料業界で初めて受賞しました。
また、現代技術の強い進歩改善に功績を残した工業に関する研究発明の中で、工業化に寄与、または将来寄与しうるものを評価する「工業技術賞」も建築塗料として初めて受賞しました。
最先端の技術と機能性の高さから、注目されている塗料のひとつです。
そんなナノコンポジットWについてご紹介いたします。
ナノコンポジットWとは?
ナノコンポジットWは2004年に発売されて以来、15年を越える実績を持つ人気の塗料です。
ナノテクノロジーを駆使した塗料で、共同特許もとっています。
今までにない「ナノテク塗料」には多くの機能があります。
ナノテクノロジーを駆使したニュータイプの無機系塗料
ナノコンポジットWは、無機成分と有機成分をナノレベルで複合(コンポジット)し、超低汚染性と耐久性を両立した無機系の塗料です。
ナノテクノロジーを駆使して開発した水性塗料用次世代型樹脂ナノコンポジットエマルション樹脂により、ナノコンポジットW特有の機能が可能になりました。
ナノテクノロジーとは、物質の特性を決定づける構造(結晶の大きさや粒子の直径など)の少なくともひとつが、ナノメートル(1nm:100万分の1ミリ)のサイズである物質を作り出すことです。
また、それらの物質を組み合わせて製品を作り出す技術のことです。
ナノコンポジットエマルション樹脂は、20~30nmの超微粒子シリカ(無機成分)の周りを、耐候性の良いアクリルシリコン樹脂(有機成分)で覆った、粒経50~60nmの非常に日小さなエマルション樹脂です。
エマルションとは、液体の中に他の液体が微粒となって分散したものを意味します。
つまり、エマルション樹脂は、水中に小さな樹脂の粒子が分散した牛乳のような形態をしたものを指します。
ナノコンポジットWは、水の中にナノコンポジットエマルション樹脂が微粒となって分散しています。
また、ナノコンポジットWは水分が蒸発するとナノコンポジットエマルション樹脂の無数の超微粒子シリカ(無機成分)が緻密かつ均一に分散したフィルムになります。
このフィルムは、これまで不可能であった無機質的な(石やガラスなど)特徴を有しているため、無機質塗料に限りなく近い水系外壁塗料にすることが出来ました。
地球温暖化対策の壁用塗料
樹脂は塗料にとって必要不可欠な原料材ですが、その原料(モノマー)を製造する原油精製という工程や焼却によって廃棄する工程において、多量のCO₂(温室効果ガス)を発生させるため、地球温暖化の原因物質のひとつとされています。
ナノコンポジットWは、この樹脂の量を大幅に低減させたナノコンポジットエマルション樹脂を使用することにより、地球温暖化対策を可能にしました。
これは、石油系資源の節約にも繋がっています。
ナノコンポジットエマルション樹脂は、樹脂の中にシリカ粒子(無機成分)が内包されているため、その容積分の樹脂の原料ができています。
従来の水性塗料と比べて樹脂量は約2分の1です。
ナノコンポジットWで戸建住宅を一軒塗装した場合、ガソリンに換算すると約10Lの石油系資源の削減ができます。
建築用塗料の地球温暖化対策は塗料メーカーの大きな課題であり、水谷ペイントは先陣を切って地球温暖化対策に取り組んでいます。
日本三大技術賞のひとつ「井上春成賞」で評価された機能のひとつであり、今後も注目される塗料となるでしょう。
産学官連携による8年の集大成
ナノコンポジットWは、8年の月日をかけて完成させた産学官連携の集大成です。
産学官連携とは、大学をはじめとする教育研究機関で生みだされた技術やノウハウを、民間企業において産業化へ結びつける活動のことです。
産業界・教育研究機関・国及び地方自治団体の三者が共同し、それぞれのニーズのマッチングを図ることで、経済活動と社会貢献活動に貢献することを目的にしています。
ナノコンポジットWの開発・製品化は、水谷ペイントと京都工芸繊維大学の木村教授、科学技術振興機構の三者の協力のもと実現しました。
参考サイト:産学官連携開発の成果 | 水谷ペイント
ナノコンポジットWのメリット
ナノコンポジットWは、ナノコンポジットエマルション樹脂による特有のメリットが多くあります。
ナノテクノロジーにより「汚れにくい」「色褪せしにくい」など、機能を驚異的に向上させた、まったく新しい水性高機能エコ塗料です。
メリットを詳しくご紹介いたします。
メリット①
セルフクリーニング機能でキレイが長持ち
ナノコンポジットWは「雨で汚れを洗い流すセルフクリーニング機能」があります。
従来の塗料の場合、汚れが塗膜中に侵入・沈着し、洗浄しても除去できない状態になります。
それに対しナノコンポジットWの塗膜は、無数の超微粒子シリカ(ガラスの微粉末)が緻密かつ均一に分散しているため、無機質的な(ガラスや石など)特性を有しており、汚れの侵入をブロックし、さらに降雨により弱く付着している汚れを洗い流します。
また、シリカ粒子は静電気の帯電を防ぐため、汚れの付着を防止します。
ナノコンポジットWは「親水性」の塗膜であるため、水が外壁に馴染みやすく、汚れといっしょに洗い流すことが可能です。
親水性塗膜とは、水が壁に馴染みやすい性質の塗膜を指します。反対に水が馴染まず弾く性質を「撥水性」と言います。
撥水性の場合、雨水をコロコロと弾いてしまうため、雨水と一緒に洗い流すことはできません。
汚れにくい性質にはナノコンポジットWの塗膜のように親水性が重要となります。
メリット②
独自の重合技術で変色を防ぐ
通常の塗膜は、紫外線や降雨により色や艶が劣化します。
しかし、ナノコンポジットWは、紫外線や降雨に非常に強いシリコン化合物を塗膜中に導入することにより、色の劣化が最小限に抑えられています。
また、水谷ペイントは西表島に暴露試験場を持っています。
西表島は日射量や降雨量が非常に多く海辺も近いため、日本国内で過酷な環境下にあり短期間で耐候性を評価できます。
この西表島の暴露試験において、JIS A 6909建築用仕上塗材で規定される、複層仕上塗材の品質表示において、最も耐候性のある「耐候型1種」に匹敵することが証明されています。
耐候型1種とは照射時間2500時間で塗膜に、ひび割れ、剥がれ及び膨れがなく、光沢保持率が80%以上で、変色程度がグレースケール3号以上であり、白亜化の等級が1以下である品質を指します。
つまり、屋外で日光・風雨・露霜・寒暖・乾湿等の自然の作用に抵抗して変化しにくい塗膜ということです。
ナノコンポジットWは重合技術(リアルシリコンテクノロジー)で、従来の塗料と比べ色や艶が長持ちし、長期的に美観を保ってくれます。
メリット③
ラジカル制御型樹脂によるフッ素並みの耐久性
ナノコンポジットWはラジカル制御塗料の括りに入ります。
ラジカル制御塗料とは、塗膜の劣化因子であるラジカルの発生を抑制することができる塗料を指します。
まず、塗料は「顔料」+「樹脂」+「添加物」から成り立っています。
・樹脂:耐久性を決める主成分(ウレタン、シリコン、フッ素など)
・添加物:塗膜にさまざまな機能を追加する成分(防藻・防かび、艶消し剤など
主成分である白色の顔料の中に「酸化チタン」という成分が入っています。
この酸化チタンは、紫外線にあたることによりラジカルという物質を発生させます。
このラジカルは、塗膜を破壊させ劣化を促進させるため塗料の弱点でした。
このラジカルを抑制する機能をもつ塗料をラジカル制御塗料といいます。
ただし、ラジカル制御塗料はラジカルを制御する機能を持った塗料の総称であるため、シリコン・フッ素・無機などのグレードとは異なります。
よく「シリコン樹脂塗料とフッ素樹脂塗料の間のグレード」と言われていますが、塗料のグレードを決めるのは有機物の樹脂です。
ナノコンポジットWはアクリルシリコン樹脂(=シリコン樹脂)を使用しているため、塗料のグレードはシリコン樹脂塗料です。
シリコン樹脂にラジカル制御機能がついているため、従来のシリコン樹脂塗料よりも高耐久ということです。
一般的なシリコン樹脂塗料の平均耐候年数が10年~13年に対し、ナノコンポジットWの耐候年数は10年~15年です。
これは、経済産業省からもフッ素並みの耐久性があることが証明されています。
6)SEM による表面観察より
…この膜厚の減少は、本耐候性試験の500時間の実暴露との対応を15年とすれば、平均して年間約0.6μmで、耐候性が優れているフッ素樹脂塗料(付属資料参照)並みとなり、ナノ材料を使用した効果があると言える。
第7回リスク評価ワーキンググループより
メリット④
防カビ・防藻性で美観を守る
ナノコンポジットWは、防カビ・防藻機能があり、長期的に建物の美観を守ります。
防カビ・防藻性とは、微生物の増殖を抑制する静菌作用と、死滅させる殺菌作用の性能のことです。
ナノコンポジットシリーズには、ナノコンポジットWの基本的な性能を継承し、防藻性を強化したナノコンポジットW防藻+(プラス)も販売されています。
ナノコンポジットWでも十分な防藻性が発揮されますが、より防藻性を高めたい方におすすめです。
メリット⑤
燃えにくい防火認定材料
ナノコンポジットWの塗膜は、一般的な塗料に比べて燃えにくさに非常に優れています。
万が一火災が起きた場合でも、塗膜中に含まれる有機成分(ラジカル制御型シリコン樹脂)と無機成分(ガラスの微粉末)が融合膜を形成し酸素をシャットアウトします。
それにより延焼を防ぐことができます。
ナノコンポジットWは、従来の水性塗料では非常に珍しい「JIS A 1321難燃一級」に合格しており、防火認定材料に認定されています。
いくら火災に気を付けていても、周りからの延焼は注意しにくいものです。
万が一の際の対策として、外壁に燃えにくい塗料を使用するのもおすすめです。
メリット⑥
水性塗料で臭いが気にならない
ナノコンポジットWは、水性塗料のため臭いがほとんど気になりません。
塗料は大きく「水性」と「油性」に分かれています。水性塗料は水道水で希釈して使用する塗料を指します。
そのため、ナノコンポジットWも水道水で希釈して使用します。
反対に、油性塗料は塗料用シンナーで希釈して使用するため、作業中はシンナー臭(灯油系の臭い)を感じます。
そのため、臭いに敏感な方には不向きな塗料と言えます。
塗装工事中は一時的に窓の開閉ができなくなるため、換気がしにくい環境になります。
油性塗料を使用する場合、シンナーの臭いがこもりやすくなります。
臭いに敏感な方、妊婦や幼児のいるご家庭、ペットを飼っている方などには水性塗料をおすすめします。
また、シックハウス症候群の原因となるホルムアルデヒドの放散が最も少ない「F☆☆☆☆(エフフォースター)」を取得しているため、安心安全な住環境を実現します。
水性塗料と油性塗料の違いについては、下記の記事をご覧ください。
メリット⑦
実績が多く信頼性が高い
どんなに素晴らしい塗料でも、施工の経過実績がなかったり施工事例が少なければ、本当に大丈夫なのかと心配に感じるのではないでしょうか?
高い買い物になるからこそ、信頼できる塗料を選びたいと思うのは当然のことです。
ナノコンポジットWは2004年に発売開始して以来、戸建住宅はもちろんのこと、商業施設、店舗、飲食店、マンションなどさまざまな物件に使用されてきました。
15年を越える施工実績があり、実際の施工経過事例(塗装後数年が経過した景観写真)も多く見ることができます。実績の有無は最大の安心材料になりますので、信頼できる塗料をご希望の方にはもってこいの塗料です。
実際の施工経過写真は、下記をご覧ください。
参考サイト: ナノコンポジットW施工経過写真集 | 水谷ペイント
ナノコンポジットWのデメリット
ナノコンポジットWにもデメリットがあります。
メリットとデメリットを確認したうえで、希望に沿う塗料か確認しましょう。
デメリット①
マットな仕上りで艶調整できない
ナノコンポジットWは、3分艶のマットな仕上りの塗料です。
艶を調整することができませんのでご注意ください。
艶のある仕上りがお好みの方は、他の塗料と比較検討することをおすすめします。
ナノコンポジットWは、マットで落ち着いた仕上りです。
そのため、リシンなどのモルタル壁には特におすすめの塗料です。
ピカピカな仕上りがお好みでない方にも人気です。
デメリット②
鮮やかな色合いにはできない
ナノコンポジットWは樹脂の性質上、彩度の高い色(ビビッドな色)に調色することができません。
鮮やかな色をご希望の方は他の塗料と比較検討しましょう。
ナノコンポジットWは、パステルカラーが好みの方におすすめです。
濃色や原色に近い色の場合、色落ちや擦過痕(擦れた痕跡)が残る場合がありますのでご注意ください。
デメリット③
低汚染性が発揮されないケースがある
ナノコンポジットWの低汚染性は非常に優れたものですが、施工部位によっては低汚染性を十分に発揮できない場合があります。
特に「傾斜壁の下端部」「笠木など水切りのない部位」「窓廻りで水切りが不十分な場合」「汚れが溜まりやすい目地の下部」「雨がかからない部位」などは、注意が必要です。
セルフクリーニング機能も降雨により汚れを洗い流すため、雨がかかりにくい場所では注意が必要です。
ナノコンポジットWには、ナノコンポジットW施工面専用の天端用保護クリヤー塗料の用意があります。
汚れやすい天端が多くあるお家は、必要に応じて施工店に相談しましょう。
ナノコンポジットWはこんな方におすすめ
ナノコンポジットWは、下記のような方におすすめの塗料です。
・長期的に美観を守りたい
・初期費用を抑えたい
・実績が多く信頼できる塗料がいい
・臭いが気にならない方がいい
・幼児、妊婦、臭いに敏感な方がいるご家庭
・マットな仕上りがお好みの方
ナノコンポジットWは、一般的なシリコン塗料よりも若干価格は上がりますが、フッ素に迫る耐久性ですので、シリコン塗料の中でもコストパフォーマンスは良いと言えます。
初期費用は抑えつつ、なるべく長期的に建物を守りたい方にはおすすめです。
マットな仕上りのみや、クリヤー仕上りが選べないなど仕上りに制限があるため、好みの仕上りではない場合は他の塗料と比較検討しましょう。
まとめ
塗料選びは製品の善し悪しだけでなく、実際に塗る建物に合った塗料選定や、正しい施工をすることが重要です。
どんなに優れた塗料も、使い方を間違えれば塗料本来の性能を発揮しなかったり、最悪の場合は不具合に繋がります。
そのため施工店選びが非常に重要になるのです。
しかし、一般の方が施工店の善し悪しを見極めるのは非常に難しいのが現状です。
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