【ALCパネル】特徴とメンテナンス方法、ALC外壁は外壁塗装で寿命が延びる!
一般の住宅に使用される外壁といえば、モルタルまたはサイディングが主で、少しこだわりが強ければタイル仕上げが採用されていることもあります。
住宅の外壁仕上げはこの3種類で説明がついてしまいますが、最近ではサイディングともタイルとも説明できないような外壁材が目に付く機会が増えました。
その正体が『ALC』です。
ALCとは、ごく簡単にいうと「強くて軽いコンクリート」をパネル状にしたものですが、ALCの寿命を延ばして長持ちさせるには外壁塗装が必須です。
ALCとはどんな外壁材なのでしょうか?
なぜ外壁塗装が必要なのでしょうか?
ALCパネルと外壁塗装の関係やリフォームのポイントについて解説します。
他の外壁材の種類については下記の記事をどうぞ。
>>外壁材の種類と特徴を比較!ピッタリな外壁材が一目でわかる
外壁材のALCパネルとはどんなもの?
ALCとは、Autoclaved Lightweight aerated Concreteの略称です。
・Autoclaved=高温高圧蒸気養生
・Lightweight aerated=軽量気泡
・Concrete=コンクリート
それぞれの頭文字をとって『ALC』と呼ばれます。
ALCパネルの特徴
ALCは、珪石・セメント・生石灰・発泡剤のアルミ粉末を主原料に、高温・高圧の蒸気がまの中で水蒸気によってコンクリートを形成する技術によって製造されます。
つまりALCはコンクリート製品というわけですが、高温高圧蒸気養生という製造法を用いることで、表面や内部に小さな気泡を生み出します。
さらに、内部に鉄筋のマットやメタルラスと呼ばれる金網を組み込むことで、ALCは強度が高く軽量でひび割れに強い外壁材です。
また、断熱性があるうえに燃えにくく、さらに防音性まで兼ね備えたパネルが形成できるわけです。
重量はコンクリートの4分の1、断熱性はコンクリートの10倍という夢のような建材で、これを外壁に用いることで室内環境を快適に保つことが可能です。
しかも、アスベスト・トルエン・キシレン・ホルムアルデヒドなどの有害物質はゼロですから、人体への影響を心配することなく安心して使用できます。
ALCを用いた外壁材
2019年7月現在、ALCを用いた外壁用パネルは国内3社が製造・販売をしています。
製品名 | 製造会社 |
---|---|
へーベル(HEBEL) | 旭化成建材株式会社 |
クリオン(Clion) | クリオン株式会社 |
シポレックス(SIPOREX) | 住友金属鉱山シポレックス株式会社 |
多くの方が、テレビコマーシャルなどで『へーベルハウス』という名前を聞いたことがあるでしょう。
ヘーベルハウスは旭化成グループ傘下の旭化成ホームズが展開するブランド名で、まさに同社のALCパネルを活用した住宅づくりが魅力となっています。
クリオンという社名を聞いたことがある方は少ないはずですが、こちらは国内最大手のセメント工業会社である太平洋セメント株式会社の子会社です。
住友金属鉱山シポレックスは言わずと知れた住友グループの一員で、国内でALCパネルを初めて導入した企業です。
ALCパネルを外壁に使うデメリット
デメリット1.ALCパネルは防水性が弱い
高耐久で軽量、耐火・断熱性に加えて防音性まで兼ね備えているというのですから、ALCには弱点など見当たらないように感じられます。
ところが、ALCパネルを外壁材として使用するには、大きな弱点があります。
なんと「防水性が弱い」のです。
ALCはコンクリート製品なので、金属製の鋼板や磁器質のタイルのように水をはじいてくれません。
しかもALCには無数の微細な気泡が存在しているため、より吸水性が高くなっています。
規格が小さいため目地が多くなる
ALCパネルは、設計時の自由度を高めるために小さめの規格で製造されています。
一般的なサイディングボードの横幅の規格は910~1,000㎜ですが、一般住宅向けに製造されているALCパネルの横幅は600㎜しかありません。
規格が小さめになっているという点はALCのメリットのひとつですが、この点がある弊害を生みます。
それが「目地が多くなる」ということです。
ALCパネルが小さいため、一般的なサイディングボードを施工した場合と比べて目地の数が増えてしまいます。
目地が増えると、それだけ水分が侵入するルートが増えてしまうので、防水性という面では弱くなります。
メンテナンスの手間が増えるという意味でも、目地が多いことはALCの弱点であると言えます。
ALCパネルの外壁では『二次防水』が存在しない
ALCパネルの施工では、二次防水を設けません。
外壁の防水構造は、一次防水と二次防水で成り立っています。
まず、モルタル・サイディングなどの一次防水が雨水や水分をシャットアウトします。
それでも内部に侵入した水分は、壁の素地に張り付けられた防水シートや透湿防水シートなどの二次防水によって遮断されます。
これで壁の内部にまで水分が侵入することを防ぐわけですが、ALCパネルの取り付け工法の特性上、二次防水は存在しません。
つまり、防水構造は一次防水としてのALCパネルのみなので、ALCの劣化・損傷があれば雨漏り・水漏れに直結するというわけです。
デメリット2.ALCパネルは目地のコーキングは劣化する
ALCはサイディングと同様に、パネルを現場で貼り合わせて施工します。
そしてサイディングボードよりもさらにその幅が狭いので、そのパネルとパネルの隙間を埋めるコーキング箇所が多くなります。
コーキングも塗装と同様に、ALCほどの耐久性は到底ありません。
コーキングの切れや剥がれからALCボードに雨水が侵入すれば、防水性のないALCはその特徴である耐久性を維持できません。
ALCパネルは構造上、内部にモルタルのラス網のような、鉄筋やメタルラスが組みこまれています。
ALCの目地のコーキングに入ったクラック(ひび割れ)を放置しておくと、吸水性の良さから雨水をどんどん吸い込み、内部の鉄筋が錆びていってしまいます。
錆びた鉄筋は膨張し、さらに周囲のALCを壊してしまいます。
ALCは強いですが、塗装とコーキングによって守られてこそ、その強さを維持できるもので、冒頭で紹介したへーベルハウスの60年点検システムでも塗装とコーキング防水の点検は5年ごとに行う事になっています。
ALCパネルは外壁塗装が必須!
ALCパネルの「防水性が弱い」という弱点を補強するためには、外壁塗装が必須です。
一般社団法人ALC協会が示す『ALCパネル取付け構法標準・同解説』でも、一般的な留意点として「ALCパネルには、防水処理または仕上げを施すことを原則とする」と明記されています。
つまり、ALCが持つ数々のメリットも「外壁塗装によって防水性を高めることが前提だ」というわけです。
工場出荷の状態では『未塗装』または『下塗り』である
各メーカーが販売しているALCパネルのほとんどが、工場出荷の状態では未塗装か、あるいは下塗りまでしか施されていません。
つまり、ALCパネルは「現場で塗装を施すのが前提」で販売されているわけです。
ここが、工場で完成品を出荷するサイディングと大きく異なる点のひとつです。
へーベルとシポレックスはシリコン系樹脂の下塗り済み、クリオンは未塗装で出荷されるため、いずれも現場での塗装は必須です。
もしこの状態でそのまま外壁として張り付ければ、防水性がないためあっという間に水分を含んで劣化してしまうでしょう。
メーカー指定の専用塗料も存在する
なんと、ヘーベルとシポレックスに関しては、中塗り・上塗りの塗料には各メーカーが販売している専用塗料の使用が推奨されており、さらにその塗装もメーカーの認定を受けた指定施工店のみが可能となっています。
へーベル専用の塗料は、成分のうち8割がシリコンレジンという無機物で構成されており、メーカーのテストでは30年相当の使用でも退色しないという結果が出ています。
シポレックス専用の塗料は、特殊セラミックスを高配合することで汚れの定着を防ぐセルフクリーニング機能が備わっており、15年以上はほとんどツヤが低下しません。
ALCパネルのリフォーム方法
ALCパネルの外壁をリフォームする場合は、次のような点に注意する必要があります。
- ①目地コーキングが劣化していないか?
- ②固定ボルト周辺で爆裂が起きていないか?
- ③表面がチョーキングを起こしていないか?
- ④タイル張りで仕上げている場合は浮き・剥がれが発生していないか?
では、それぞれの点を詳しく解説していきましょう。
注意点①
目地コーキングが劣化していないか?
ALCパネルはサイディングボードよりも目地の数が多くなるので、目地コーキングの劣化のチェックは非常に重要です。
ALCパネルは一般的なサイディングボードよりも厚いという特徴があります。
一般的なサイディングボードの厚さは16㎜程度ですが、ALCパネルの厚さは35~50㎜が標準です。
ボードに厚みがあるということは、つまり「目地が深くなる」ことを意味します。
目地が深い場合は、目地の奥に『バックアップ材』という硬い発泡材を埋めますが、それでもALCの場合はサイディングの目地よりもコーキングの層が厚くなります。
新築時は耐久性が高い『二液型』のコーキングを使用しており、10~12年程度の使用に耐えるといわれていますが、ALC外壁の防水性能を支える生命線ですから、10年に一度の点検は必須でしょう。
注意点②
固定ボルト周辺で爆裂が起きていないか?
ALCパネルは、壁の素地に打ち込んだ金具やレール上に配置したジョイントにパネルを固定することで張り付けられます。
張り付け時にはALCにボルトを打ち込むことになりますが、このボルトがパネル内でサビてしまうと、外側に向かって爆発したように破損する『爆裂』が生じます。
サイディングボードでも同じように爆裂が起きますが、ALCパネルはさらに爆裂が起きやすいため、固定用のボルト周辺に爆裂が起きていないかを厳しくチェックする必要があります。
注意点③
表面がチョーキングを起こしていないか?
新築時に高耐久の塗料で塗装していたとしても、永久に劣化しない塗料は存在しません。
外壁塗装に使用される塗料は、時間が経過することによって確実に劣化します。
しかも「耐用年数は15年」とうたっていたとしても、直射日光や風雨にさらされやすい面や湿気が多い面では10年程度で激しく劣化することもあるので、塗料の劣化チェックも必須です。
ALCパネルに施された塗装の劣化をチェックする方法はいたって簡単で、乾燥した状態のALCパネルを手のひらでサッとなでるだけです。
もし手のひらに白っぽい粉が付着すれば『チョーキング現象』が起きている証拠です。
チョーキング現象は、塗料に含まれていた顔料という色の成分が劣化・分解されて表面に吹き出ている現象ですから、チョーキングが認められる=塗装が劣化していると判断できます。
注意点④
タイル張りで仕上げている場合は浮き・剥がれが発生していないか?
一般住宅ではあまりみかけませんが、ALCパネルにはタイルの張り付けが可能です。
マンションなどのビルではALCパネルにタイルを張り付ける仕上げが採用されていることが多々ありますが、ALCは目地が多いため、目地コーキングの上に張り付けたタイルは密着性が低く剥がれやすいというデメリットがあります。
一般住宅でもALCパネルのタイル仕上げが採用されることがあるので、浮き・剥がれがないかを入念にチェックしないといけません。
もし浮き・剥がれがあると、タイルの剥落による危険があるだけでなく、しかも剥落部分は水分の侵入を許しやすくなるからです。
劣化が激しい場合は『カバー工法』も有効
「ALC外壁を採用していたが、劣化が激しい。」
「いままではサイディング外壁だったが、ALC外壁にしたい。」
こんな希望を持っている方なら、カバー工法によるリフォームがおすすめです。
カバー工法とは、既存の外壁をそのままに、上からほかの外壁材を重ね張りする工法のこと。
ALCパネルは非常に軽量であるため、住宅の躯体に大きな負担を与えず重ね張りが可能です。
また、ALCパネルは張り付けが容易であるため、施工性も良く、カバー工法に適しています。
既存の外壁をすべて撤去して新たにALCパネルを張り付ける場合、既存の外壁の撤去費用や廃材の処分費用がかかるため、リフォーム代が高額になります。
カバー工法なら既存外壁の撤去・処分費用がかからないので、割安に張り替え同様の効果が得られます。
>>外壁リフォームのカバー工法なら格安になる!外壁塗装と徹底比較
ALCパネルの外壁塗装、相場はいくら?
ALCパネルの外壁を塗り替える場合、どのくらいの費用がかかるのでしょうか?
まず、旭化成のヘーベルを専用塗料で塗り替えた場合、1㎡あたり8,000円の費用がかかります。
建坪40坪の住宅なら外壁の面積はおおむね160㎡になるので、材料費と工賃だけで128万円になります。
さらに足場代・高圧洗浄代・養生代・目地コーキングの補修などを含めると、200万円に近い工事になるでしょう。
必ずしも専用塗料が必要なわけではない
ALCパネルの特性を理解し、ALCのメリットを阻害しない塗料を選ぶ知識がある塗装業者にお任せすれば、必ずしもメーカー指定の専用塗料を使う必要はありません。
ALCパネルは新築時にアクリルシリコン樹脂系の塗料が使用されているものが多いので、塗り替えに使用する塗料もシリコン樹脂系以上のグレードを採用するのがベストでしょう。
また、ALCパネルは通気性が高いため、呼吸を妨げないためには通気性・透湿性が高い塗料を選びたいところです。
安価なウレタン樹脂系塗料では、耐久性に不安があるだけでなく、塗膜が硬いため剥がれやすく、しかも通気性・透湿性がないためALCパネルの塗装には不向きだといえます。
専用塗料ではないもので相性が良い塗料を使えば、1㎡あたり3,000~3,500円程度が相場です。
外壁のみの塗装費用は48~56万円になり、なんと72~80万円もの節約になります。
ただし、ALCパネルと塗料の相性を考えずに安い塗料を提案する塗装業者にお任せするのは間違いです。
外壁材と塗料の相性は、数多くの外壁塗装工事を経験することによって身につく知識なので、ALCパネルの塗装経験が豊富な塗装業者にお任せしましょう。
ALCパネルの施工ができる業者をお探しなら外壁塗装パートナーズまで!
ALCパネルは数多くのメリットが備わった優れた外壁材ですが、防水性を維持するためには10年を目安にプロの外壁塗装業者による点検を受けるのがベストです。
点検はALCパネルの特性や外壁塗装との関係をしっかり理解している業者にお任せしましょう。
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